映画「あん」のネタバレありのあらすじ・考察・感想。樹木希林さん、永瀬正敏さんの演技に超感動

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春文

大学時代は文学部史学科文化人類学専攻で宗教、西洋文化史、サブカルチャーなどを勉強。趣味は漫画映画ジブリYouTube芸能ダークアカデミア、地域文化、ブログなど。現在は制作会社の運営などもしてます。

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本日は主演樹木希林さんの映画「あん」を紹介したいと思います。

ある事情からどら焼きやを営む男、千太郎(永瀬正敏さん)のもとに、突然老婆、徳江(樹木希林さん)が時給50円でいいからとバイトの応募にくる。千太郎は年寄りには厳しいからと断り続けるのだが、ある日徳江が持参したあんこを食べて、その美味しさから徳江を雇うことにする。
あんこが評判になりどら焼き屋には長蛇の列ができるようになるのだが、ある日徳江がハンセン病患者ということが発覚。街に噂が広まると客足は途絶え、それをきっかけに徳江はバイトを辞めて患者施設での生活に戻っていくのだが…。

永瀬さんの演技、樹木希林さんの演技に痺れながら、千太郎と徳江さんの悲しい運命に打ちひしがれる映画です。千太郎と徳江と親しく、やや暗い部分がある中学生ワカナを演じる内田伽羅さんは樹木希林さんの実の孫らしいです。
今回も”くらしのワルツ”らしく、ポイントで見どころ・気になりどころを紹介した上で、最後にあらすじ・ネタバレありの考察・感想を書きたいと思います。



演技力|映画「あん」の感想・考察①


この映画の最大の魅力は演技力だと思いました。
普段私は邦画を見ないのですが、その理由が「日本語だと演技のあざとさを理解できすぎる」ということ。
コメディ映画だとわざとらしい演技もそれらしく見えるのですが、感動できる映画・ドラマ系の映画だとなかなか苦しくなってしまいがち。
この作品は樹木希林さんと永瀬さんの演技力が素晴らしくて没入していました。永瀬さんまじでかっこいいです。。

苦しい|映画「あん」の感想・考察②


そしてこの物語の特徴は終始苦しいところ。ラストはハッピーエンド風なのですが、救われない。救われた感出して終わるのですが、救われた感を出さないで終わってほしかったなと思うほど笑
ここでは苦しかったポイントをまとめてみます。
・徳江さんがバイトの面接に来たときに千太郎がいう「おばあちゃんはだめ」宣言
・どらやきのあんが業務用だった瞬間
・徳江さんがハンセン病(らい病)だと他人に知らされた瞬間
・オーナーが登場して徳江さんや千太郎の悪口を言い続ける瞬間
・千太郎の過去には暴力沙汰があり、それを理由に働いていることがわかったとき
・ワカナが純粋に「おばあちゃん指どうしたの?」と聞いて、おばあちゃんがしれっとスルーしたのに何度も「指どうしたの?」と聞き続けるシーン
・千太郎が一人で酔いつぶれ、店を閉めることにしたのにおばあちゃん一人で店を勝手に切り盛りするシーン
・オーナーが急にどら焼きやに甥を連れてきて、店をお好み焼きも出せる店にしようと一方的に通達してきたこと
・徳江さんが死んだとき
・親に最後の思いを伝えられなかった千太郎が、徳江さんのために書いた手紙も渡せなかったこと
最後、手紙を渡せなかった千太郎は、徳江さんが残していたボイスメッセージを聞いたときに「自分が言葉にできなかった思いは伝わっていたのかもしれない」という気もちで号泣をし、慰謝料のために働いていたオーナーのもとを離れて徳江さんが好きだった桜に囲まれた露天でのどら焼きやを再開します。
報われるようではありますが、千太郎1人の感情としては救われていると思いつつ、映画を見ていた私の気もちはやや暗いままでした笑

ものづくりの本質|映画「あん」の感想・考察③


この映画の題名「あん」の名の通り、千太郎が営むどら焼きやのあんが一斗缶に入った業務用だったことに呆れた徳江さんが、千太郎に餡づくりを0から仕込む場面があります。
ただ、この場面で唸ってしまうのは、業務用を使っていた千太郎が、徳江さんのあんを食べたときに味も、香りも理解した上に徳江さんを採用することを決めて、あんの仕込みのために朝4時おきで営業をするようになること。
ものづくりをする人というのは、自分ができる・できないに関わらず一定の価値観を持っていて、それを体験したときに無下にできるものではないと思うのですが、千太郎にはその芯を感じました。

ワカナは実存しない|映画「あん」の感想・考察④


千太郎と徳江さんと親しくする中学生ワカナは、おとなしく、暗めの女の子。一方、千太郎にはどらやきの端っこをもらい家で飼っている鳥に餌をやったり、徳江さんとも親しくなったり。彼氏もいて、二人で勉強をしたり仲良く遊んだりもしています。
おとなしいけどどこか芯がある、、という女の子なのですが、どうにもこういう子は実存しないよな。と思ってしまいました。
今までのワタシの人生で、おとなしくて暗くて、同年代の友達は少ないけど彼氏はいて、大人に対して気を遣いつつも親しく、ときに図々しく過ごし、おっとりと話す女の子は誰一人見たことがありません。
このワカナという女の子はおそらく、映画の中でしか存在しない架空の人物だなと思い、最後まで感情移入することはできませんでした。

ハンセン病|映画「あん」の感想・考察⑤


ハンセン病はジブリ映画「もののけ姫」でも描かれていますが、日本では古くからある病気の一つで、ハンセン病が発症すると肌がただれ、溶けたようになり体の一部がくっついてしまったりする病気です。
この映画では樹木希林さん演じる徳江さんの指がくっついてしまったという描写がでますし、もののけ姫ではハンセン病患者たちは顔が見えないように包帯でぐるぐるまきになっています。
人に伝染る病気ではない上に、現代では治療薬もあるので数日で治療が可能なのですが、人の噂というのは怖いもので、そういった事実とは関係なく、噂を起点にどら焼き屋には客が来なくなります。
この映画はハンセン病を第2のテーマにしていますが、映画自体が面白いのでハンセン病というものに対しての自分自身の目線が少し変わった気がしました。

映画「あん」、演技力、物語ともにとてもおもしろい作品です。ぜひ見てみてください。



映画「あん」の製作・概要

2015年製作/113分/G/日本・フランス・ドイツ合作
配給:エレファントハウス

制作陣

監督・脚本:河瀬直美
原作:ドリアン助川

キャスト

徳江:樹木希林
千太郎:永瀬正敏
ワカナ:内田伽羅
佳子:市原悦子
ワカナの母:水野美紀
原作はこちら↓

画像:(C)2015映画「あん」製作委員会/COMME DES CINEMAS/TWENTY TWENTY VISION/ZDF-ARTE



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