映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」のネタバレありのあらすじ・考察・感想。レイ・クロックとマクドナルド兄弟の悲しい歴史

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春文

大学時代は文学部史学科文化人類学専攻で宗教、西洋文化史、サブカルチャーなどを勉強。趣味は漫画映画ジブリYouTube芸能ダークアカデミア、地域文化、ブログなど。現在は制作会社の運営などもしてます。

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今回はマクドナルドの創業者であるレイ・クロックの自伝を映画化した作品「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」を紹介したいと思います。
レイ・クロックといえば自伝物語「成功はゴミ箱の中に」が有名ですが、今回はその自伝本を映画化したものになります。
マクドナルドの創業者として有名なレイ・クロックですが、ご存知の方も多いと思いますが、実はマクドナルドを大きくした人物であるものの、マクドナルドの営業をはじめて、システムを作り上げた人物ではありません。本当の創業者はマクドナルド兄弟。レイ・クロックはミキサーの営業マンだったことがきっかけで、ミキサーの注文を受けたマクドナルド兄弟の店に出会い、効率的な営業システムに一目惚れ。
その後マクドナルド兄弟とフランチャイズ契約をし始めたものの、本物志向の兄弟と、拡大志向のレイ・クロックで経営の折り合いがつかなかったため、兄弟から2億円ほどでマクドナルドの営業権を買収することになります。
「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」はそんなレイ・クロックがマクドナルド兄弟がはじめたマクドナルドを乗っ取るまでの物語です。

今回もポイントで見どころ・気になりどころを紹介した上で、最後にあらすじ・ネタバレありの考察・感想を書きたいと思います。

マックは破壊的イノベーションだった|映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」の感想・考察①

頼み方がわからないレイ・クロック


この作品の見どころは、レイ・クロックに焦点を当てながらも、マクドナルド兄弟がはじめたハンバーガーショップ「マクドナルド」が出来上がるまでの過程を丁寧に描いている点です。
マックは今でこそ「スタンダード」なハンバーガーショップですが、当時はハンバーガーショップといえば、チキンも扱うし、ハンバーガーも扱う。ドライブインかイートインが当たり前で、席まで注文された品をウエイトレスが持っていくスタイル以外存在しませんでした。今でいうファミレスですね。
そんな中で「ポテト、ドリンク、ハンバーガーしかない」「席がない」「ドライブインでもない」「皿もない」だからこそ「30秒で提供する」というシステムは破壊的でした。
しかし、マクドナルドは営業を開始してすぐ、お客さんからのクレームが大量に発生します。なぜならシステムが新しいから頼み方がわからない、当たり前のサービスが提供されない、意味がわからない、といった具合だったからです。
しかし、お客さんがその価値を理解してからは大きな反響を得て、地域で圧倒的な存在になっていました。

マクドナルドはリーンスタートアップの原点|映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」の感想・考察②

営業システムはテニスコートで。


その画期的なシステムをつくったのはマクドナルド兄弟ですが、システムを作り上げるまでの工夫が面白い。
まさにソフトウェア開発、リーンスタートアップの原点といえると思いますが、通常の飲食店では当たり前ですが店員の動線を丁寧に考えてお店の設備を整えると思います。
マクドナルド兄弟は圧倒的に効率的で、速いオペレーションを構築するためにテニスコートにお店を再現することからスタートします。
テニスコートにチョークでお店の設計図を描き、実際にスタッフに調理工程を再現させ、うまく行かないときは線を引き直し、最終的に効率的なオペレーションが構築できた設計図を工務店に渡してそのとおりに設備を用意するのです。効率化のために必要だった調理器具は特注で開発する徹底ぶり。その工夫が功を奏し、現在のマクドナルドにつながる高速オペレーションが完成します。

夜明けはいつも遠い|映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」の感想・考察③

この物語でもかなり序盤の部分ではありますが、私にとっては一番の感動どころは、このマクドナルド兄弟の創意工夫でした。
苦労して作り上げた店舗システムは最初、お客さんに受け入れられることはありませんでした。しかし、営業を続けているとついにお客さんが喜ぶ姿を実感できるようになります。
お客さんの価値に寄り添ったサービスを作り上げると、最初はおどかれたり、ついてこれなかったりすることがあります。ただ、信じられなくても粘っているうちに価値を理解してもらえて、「夜明け」を感じることができる、そう思えます。
逆にいうと、苦労したからこそ、価値を追求したからこそ夜明けがひとしお眩しく感じられるのかもしれません。

つくる人ではなく、拡大する人が評価される時代|映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」の感想・考察④

営業権を奪われたマクドナルド兄弟。「マクドナルド」の名を奪われた2年後、二人の店は営業を終了する


そしてこの物語の”主役”であるレイ・クロックの物語に移りますが、レイ・クロックはこの”発明”を見事に奪い去ります。
マクドナルドのフランチャイズ営業権を手にしたレイ・クロックは当初は苦労しながら営業をするものの、徐々に”レイ・クロック的マクドナルド流”の手法を発見し、急成長していきます。
その手法は「フランチャイズオーナーの土地を事前に買収し、家賃収入で利益を得る」「マクドナルド兄弟の地域密着型店舗(本店)をはるかに凌駕するマクドナルドチェーンをフランチャイズとしてつくる」というもの。ハンバーガーショップとして利益をあげるのは利益率からも、格安チェーンとして営業するシステムからも、そして本店へのフランチャイジー(営業権の手数料)からもかなり厳しいです。
そこで、フランチャイズオーナーに営業権を渡しながら、家賃収入を得ることを最大の利益の軸にすることにしました。その仕組みは現代のマクドナルドにも生き残っています。(日本は数年前の経営悪化でかなりの土地を手放していたと思います)
そして、ついに本店の土地も買収したレイ・クロック。マクドナルド兄弟に対しても契約を破棄するように請求し、2人に対して2億円以上の賠償金を支払うことで、事実上の買収を完了します。
現代ではマクドナルド兄弟のような”発明家”自身が無茶な買収に会ったり、乗っ取りに会ったりしたらSNSやメディアなどで批判の目にさらされることも多いでしょうが、当時はレイ・クロックのような無茶をする経営者が多かったのだろうなと察します。

レイ・クロックへのうーん…という気持ち悪さは残るものの、映画としては面白く、マクドナルドの仕組み・中身を知ることができたという点で面白い作品だと思います。
私自身はビジネス系の啓発本や自伝本がけっこう好きなので楽しめたというのもありそう。「成功はゴミ箱の中に」や日本マクドナルドの創業者である藤田田(ふじた でん)さんの「勝てば官軍」「Den Fujitaの商法」なども読んでいたので。
では、興味がある方はぜひご覧ください。

映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」の製作・概要

2016年製作/115分/G/アメリカ
原題:The Founder
配給:KADOKAWA

制作陣

監督:ジョン・リー・ハンコック
製作:ドン・ハンドフィールド/ジェレミー・レナー/アーロン・ライダー
製作総指揮:グレン・バスナー/アリソン・コーエン/カレン・ランダー/ボブ・ワインスタイン/ハーベイ・ワインスタイン/デビッド・グラッサー/クリストス・V・コンスタンタコプーロス
脚本:ロバート・シーゲル

キャスト

レイ・クロック:マイケル・キートン
ディック・マクドナル:ドニック・オファーマン
マック・マクドナルド:ジョン・キャロル・リンチ
ジョーン・スミス:リンダ・カーデリニ
ロリー・スミス:パトリック・ウィルソン
ハリー・ソナボーン:B・J・ノバク
エセル・クロック:ローラ・ダーン
フレッド・ターナー:ジャスティン・ランデル・ブルック
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